「そうですか。あの事件からもう10年になりますか。」
九州の某県にある田舎の港町。そこから小型船でおよそ1時間ほど行くと無人島の独眼島がある。
その独眼島にある洋館・「柴崎邸」が10年前の事件の舞台である。
ニッキーは10年ぶりに九州に、そしてこの港町にやってきた。
かつて柴崎邸で雇われていた坂崎夫妻の家を訪れたのである。
かつて坂崎夫妻は週末になると独眼島を訪れ、食料品や必要な生活用品などを屋敷に送り届け、
屋敷の掃除や主人のための食事の世話などを行っていた。
土曜の昼に島を訪れ、日曜の夕方には港町に戻るという仕事内容なのであった。
10年前の夏にニッキーら7人を島に送り届けたのも坂崎夫妻である。
「あの時は土日の仕事だけで主人から月20万円もらってましてねえ。年金と合わせると
月の収入は40万。そりゃ楽な生活でしたよ。」
坂崎という男性は今年78歳になるとのことだ。
「自分は今年35になるんですよ。事件の時は25歳。あの時は若かったなあ。」
ニッキーは出されたお茶に口をつけた。